Jazz Q / Živí se diví: Live in Bratislava 1975

最近、技術系の同人誌販売のイベントなんかに参加してて、ちょっとこっちに手がつけられていませんが、音楽は聴いてます。最近入手した CD の中から良かったものの紹介。

チェコの Jazz Q です。1975 年スロヴァキアでのライブを収録したライブ盤。2013 年に一度リリースされていたようです。

これはもう Jazz Q 全盛期と言える演奏ではないでしょうか。

1 曲目出だしから Mahavishunu Orchestra を思わせるヴァイオリンとギターのサウンド、RTF を思わせるエレピが印象的。オリジナリティはどうなん? って思うかもしれませんが、だいぶ流麗な感じになったものの独特の暗さを漂わせながらのゴリゴリしたギターソロなんかは、これぞ東欧という感じです。

ちなみに Mahavishunu の “Sanctuary”、Billy Cobham の “Stratus” も演奏していますので、まあその辺りの影響を強く受けてはいるのでしょうね。

初期のゴリゴリジャズ感と、フュージョン的な流麗なバランスの取れた 1 曲目もいいのですが、女性ボーカルが入りの強いエネルギーを感じる 2 曲目がすばらしいです。

その他、カバー曲含めてなかなかの迫力で聴かせてくれますので是非どうぞ。

JPL / Sapiens Chapitre 3/3: Actum

私の好きな現代フレンチプログレバンドの一つ Nemo のギターリスト Jean-Pierre Louveton のソロプロジェクト JPL。

前作までは Nemo との区別が難しいほど音楽性は一致してました。今回の作品は最初聴いた時は初期 JPL に近いタイトな味わいを感じたので、原点回帰(ってほどの変化でもないけど)かな?と思ったのですが、何度も聴いてると近作からの流れであまり変わらないな〜と思いました。3 部作の最後の作品らしいですし、あまり変わってなくて当たり前なのかもしれません。

Minimum Vital / Live Minnuendo 2021 を聴きながらバンドの歴史を振り返ってみた

私が 1990 年中盤から本格的にプログレにハマっていったころ、併せてハマっていたバンドがこの Minimum Vital です。

その Minimum Vital から、初期から現在に至るまでの曲を演奏するライブ盤が届いたので、それを聴きながらこのバンドの歴史をたどってみようというブログエントリーです。今回の Live 盤を聴きながら「やっぱり Minimum Vital は好きやなあ」と思ったので、このバンドの歴史を追ってみたいと思います。


このライブ盤は 2021 年のスペインであったフェスでの演奏をおさめたもののようです。

演奏は 2015 年作 “Pavanes” と 2019 年作 “Air Caravan” の曲が中心ですが、終盤に初期のアルバムからの曲が演奏されています。

Jean-Luc と Thierry の Payssan 兄弟による印象的なキーボード・ギターワークが印象的です。基本的に中世音楽というかバロック音楽的な下地にフュージョン的なギタープレイと、管弦楽器などの音色によるシンフォニックなキーボードによるカラフルなサウンドが特徴的です。

結成は 1983 年で、今も現役ですので 40 年近くの活動ということになります。

このバンドを最初に聞いた時はほぼフュージョンの文脈で聴いていて、あまり古楽的なテイストは感じていなかったのですが、今聴くとその影響をはっきり感じますので、私の音楽の幅も広がったのでしょう、きっと。

Minimum Vital は時期によってパッと聴きスタイルが違っていて、私は次のように分類しています。なお、実際の 1st はカセットテープでリリースされ、CD リリースの際にそのカセットアルバムと CD の 1st のカップリングでリリースされており、それを 1st としています。

フュージョン路線期(1st〜3rd)

カセットリリースの “Envol Triangles” と 2nd アルバム “Les Saisons Marines” のカップリングによる 1st CD はバロック音楽の雰囲気をほのかに漂わせるフュージョンサウンド。まだバロックよりは地中海サウンド的なエキゾチックサウンドという感じもします。ギターが印象的な明るいフュージョンサウンドです。アルバムタイトルの “Envol Triangles” はフルート入りで印象的。

基本、2nd の “Sarabande” はもう少し古典的な雰囲気が増した、シンフォフュージョン。アコーディオンによるオープニングから、ハンドクラップを合図にハイテンポの弾むようなフュージョンサウンドが始まるところがゾクゾクします。ただ、基本とするサウンドはフュージョン的なシンフォロックという感じではあります。

3rd の “La Source” は 1st, 2nd の路線を引き継ぎながら、少しポップな要素を加味していて、名作 4th への伏線を感じる作品ではありますが、あくまでメインはフュージョンサウンドベースのシンフォロックです。

フレンチポップ期(4th~5th)

4th アルバム 1 枚しかないのに、これで「期」を成すのか!という話はありますが、それほど Minimum Vital にとっては変化して、その後も同じサウンドはなかったという衝撃的な特異点とも言えるのが 4th アルバムの “esprit d’amor” です。

これまでのフュージョンインストサウンドからがらりと変わって、女性ボーカルをメインに据えた、フレンチポップ路線へと急展開します。とは言ってもこれまでのテイストは残したボーカル入りフュージョンとも言えるかもしれません。

最初聞いた時は(この頃はまだ私はインストフュージョンサウンドがお好みだったので)「え〜、ボーカル入ったポップスになってしまったん?!」というちょっと否定的な感覚の混じる驚きを感じたのですが、何度か聴くうちにこの、これまでの Minimum Vital サウンドと共通する三拍子系のリズミカルなサウンドをベースにした軽快かつ重厚なポップサウンドにハマっていったのでした。

そういうわけで、このアルバム一枚で「期」を成立させるほどのインパクトとハマりをもたらしたのでした。

この時期のライブ映像。この曲も名曲。

さすがにこのラインナップは今と違いすぎるからか、この雰囲気似合う女性ボーカルがいないからか、ライブ盤にはこの期の名曲は入っていません。

5th アルバムはライブ盤でこの時期のライブが収録されています。

アコースティック色入り古楽ロック期(6~7th)

2003 年 “Atlas” と 2009 年 “Capitaines”、ここで女性ボーカル入りのフレンチポップ色は後退し、3rd までの路線に回帰した感じです。男女混成のボーカルになり、女性ボーカルが前面に出てくる感じはなくなりました。2002 年に Payssan 兄弟による Vital Duo という作品があり、その流れを汲んでいるのかなと思いました。

アコースティック色と言っても、それまでの伸びやかなフュージョン路線は継承されており、そこにアコースティック色が入っているかなという感じです。アコースティックギターの流れるような演奏が印象的です。この期の曲も今回のライブ盤には入っていません。

初期回帰期(8th~)

現時点がこの期です。この前のアコースティック色がある5th,6thと大きく変わらない気がしますが、若干アコースティック色が減退し、フュージョン路線期(1st~3rd)に回帰しながら、フュージョン路線期よりは古楽色は強い感じです。これぞ Minimum Vital って感じで結構好きです。

今回のライブ盤は、この時期の 8th “Pavanes”(2015)と 9th “Air Caravan”(2019)からの曲が中心となります。


というわけで、初期の曲と最近の曲が聴ける今回のライブ盤で Minimum Vital の魅力を体感してみてください。

Brad Mehldau / Jacob’s Ladder

プログレに触発されたという Brad Mehldau の新譜、この記事を読んでいたのにリリース忘れてて、お知り合いに教えてもらって早速聴きました。

1 曲目の内省的な曲 “Maybe as his skies are wide” は Rush の “Tom Sawyer” 入りですね。

この曲自体はあまりプログレは感じませんが、次の曲がキター♪───O(≧∇≦)O────♪という感じですね。

スリリングでエキサイティングなプログレッシヴなジャズ!!(プログレッシヴジャズというと違う音楽になりそうだけど)もうプログレじゃないですか。ギミックの利いたスリリングな展開!!

アルバムタイトルにもなっている組曲 “Jacob’s Ladder” は、ジャズのプログレ的解釈という感じで、静かに展開していきますが、なかなか聞き応えあります。

そして、1 曲目でも導入されていた “Tom Sawyer” そのものも収録されています。

“Cogs in Cogs” もなかなかスリリング。ちょっと Chick Corea (RTF)的な雰囲気も漂いますね。

これもいい!

Er. J. Orchestra / Gabrielius

(こちらもウクライナの良作プログレなので再掲です)

ウクライナのグループの1st、1998年作。

出だしから Pat Metheny + Jan Garbarek と言った雰囲気ではじまるウクライナのフュージョングループです.とは言っても、それだけの言葉では語れない繊細で美しい音楽です。

ライナーのメンバー紹介が読めないので、どれだけのメンバーと 楽器が参加しているのか分からないのですが、結構たくさんの楽器が演奏していると思います。しかし、参加楽器全部が一挙に演奏して重厚さを出すと言う感じではなく、いくつかの楽器で繊細で美しい演奏を聴かせた後に、コロッと楽器編成が代わってまた美しい演奏が続くという部分も多く見られました。

例えば、出だしが民族楽器 (?) ではじまるエキゾチックな感じの 演奏で、途中からピアノやリコーダーによる美しい演奏に移行すると いう曲がいくつかありました。そのエキゾチックさとその後の美しい 演奏の変化が、意外な感じをあまり与える事なく、しかし曲がだらだらとした演奏になるのを防いでいるような感じもします。

ヴァイオリンは独特な演奏で、リコーダーが叙情的な雰囲気を良く出しているが、ピアノの美しさとサックスの透明感ある美しい演奏 (Garbarek 的) が印象的です。

全体的に叙情的で非常に美しい曲が多く、それにエキゾチックな雰囲気がオリジナリティを与えています。演奏レベルも文句なしで、満足の一枚でした。

(1999年に書いたレビュー)