Minimum Vital / Live Minnuendo 2021 を聴きながらバンドの歴史を振り返ってみた

私が 1990 年中盤から本格的にプログレにハマっていったころ、併せてハマっていたバンドがこの Minimum Vital です。

その Minimum Vital から、初期から現在に至るまでの曲を演奏するライブ盤が届いたので、それを聴きながらこのバンドの歴史をたどってみようというブログエントリーです。今回の Live 盤を聴きながら「やっぱり Minimum Vital は好きやなあ」と思ったので、このバンドの歴史を追ってみたいと思います。


このライブ盤は 2021 年のスペインであったフェスでの演奏をおさめたもののようです。

演奏は 2015 年作 “Pavanes” と 2019 年作 “Air Caravan” の曲が中心ですが、終盤に初期のアルバムからの曲が演奏されています。

Jean-Luc と Thierry の Payssan 兄弟による印象的なキーボード・ギターワークが印象的です。基本的に中世音楽というかバロック音楽的な下地にフュージョン的なギタープレイと、管弦楽器などの音色によるシンフォニックなキーボードによるカラフルなサウンドが特徴的です。

結成は 1983 年で、今も現役ですので 40 年近くの活動ということになります。

このバンドを最初に聞いた時はほぼフュージョンの文脈で聴いていて、あまり古楽的なテイストは感じていなかったのですが、今聴くとその影響をはっきり感じますので、私の音楽の幅も広がったのでしょう、きっと。

Minimum Vital は時期によってパッと聴きスタイルが違っていて、私は次のように分類しています。なお、実際の 1st はカセットテープでリリースされ、CD リリースの際にそのカセットアルバムと CD の 1st のカップリングでリリースされており、それを 1st としています。

フュージョン路線期(1st〜3rd)

カセットリリースの “Envol Triangles” と 2nd アルバム “Les Saisons Marines” のカップリングによる 1st CD はバロック音楽の雰囲気をほのかに漂わせるフュージョンサウンド。まだバロックよりは地中海サウンド的なエキゾチックサウンドという感じもします。ギターが印象的な明るいフュージョンサウンドです。アルバムタイトルの “Envol Triangles” はフルート入りで印象的。

基本、2nd の “Sarabande” はもう少し古典的な雰囲気が増した、シンフォフュージョン。アコーディオンによるオープニングから、ハンドクラップを合図にハイテンポの弾むようなフュージョンサウンドが始まるところがゾクゾクします。ただ、基本とするサウンドはフュージョン的なシンフォロックという感じではあります。

3rd の “La Source” は 1st, 2nd の路線を引き継ぎながら、少しポップな要素を加味していて、名作 4th への伏線を感じる作品ではありますが、あくまでメインはフュージョンサウンドベースのシンフォロックです。

フレンチポップ期(4th~5th)

4th アルバム 1 枚しかないのに、これで「期」を成すのか!という話はありますが、それほど Minimum Vital にとっては変化して、その後も同じサウンドはなかったという衝撃的な特異点とも言えるのが 4th アルバムの “esprit d’amor” です。

これまでのフュージョンインストサウンドからがらりと変わって、女性ボーカルをメインに据えた、フレンチポップ路線へと急展開します。とは言ってもこれまでのテイストは残したボーカル入りフュージョンとも言えるかもしれません。

最初聞いた時は(この頃はまだ私はインストフュージョンサウンドがお好みだったので)「え〜、ボーカル入ったポップスになってしまったん?!」というちょっと否定的な感覚の混じる驚きを感じたのですが、何度か聴くうちにこの、これまでの Minimum Vital サウンドと共通する三拍子系のリズミカルなサウンドをベースにした軽快かつ重厚なポップサウンドにハマっていったのでした。

そういうわけで、このアルバム一枚で「期」を成立させるほどのインパクトとハマりをもたらしたのでした。

この時期のライブ映像。この曲も名曲。

さすがにこのラインナップは今と違いすぎるからか、この雰囲気似合う女性ボーカルがいないからか、ライブ盤にはこの期の名曲は入っていません。

5th アルバムはライブ盤でこの時期のライブが収録されています。

アコースティック色入り古楽ロック期(6~7th)

2003 年 “Atlas” と 2009 年 “Capitaines”、ここで女性ボーカル入りのフレンチポップ色は後退し、3rd までの路線に回帰した感じです。男女混成のボーカルになり、女性ボーカルが前面に出てくる感じはなくなりました。2002 年に Payssan 兄弟による Vital Duo という作品があり、その流れを汲んでいるのかなと思いました。

アコースティック色と言っても、それまでの伸びやかなフュージョン路線は継承されており、そこにアコースティック色が入っているかなという感じです。アコースティックギターの流れるような演奏が印象的です。この期の曲も今回のライブ盤には入っていません。

初期回帰期(8th~)

現時点がこの期です。この前のアコースティック色がある5th,6thと大きく変わらない気がしますが、若干アコースティック色が減退し、フュージョン路線期(1st~3rd)に回帰しながら、フュージョン路線期よりは古楽色は強い感じです。これぞ Minimum Vital って感じで結構好きです。

今回のライブ盤は、この時期の 8th “Pavanes”(2015)と 9th “Air Caravan”(2019)からの曲が中心となります。


というわけで、初期の曲と最近の曲が聴ける今回のライブ盤で Minimum Vital の魅力を体感してみてください。

Minimum Vital / Air Caravan’

あの頃の Minimum Vital が帰ってきた!

1980 年代から活動を続けるフランスの Minimum Vital の 5 年ぶりの新作。

まさにあの頃の Minimu Vital が帰ってきた!という感じ。「あの頃」っていつだよ?って、そう、私が Minimum Vital 推しになった(なってたのかw)きっかけとなった 1985 年カセットでのデビュー作 “Envol Triangles” と 1987 年 2nd “Les Saisons Marines” の 2in1 の CD の頃です!!

この頃の少し中世バロック的な雰囲気を漂わせる軽快なフュージョン的なノリから、徐々にボーカルを導入した中世古楽トラッド路線へと変化し、その後シンプル化してアコースティックな古楽バロック調(?)になり、そのまま中世路線を突っ走るのかと思ったら、なんと!メンバーも 4 人編成になり、これまでの中世バロック調の風味は残しながらも、初期のフュージョン調路線への回帰を図った作品で復活です。

中世風味のダンス・ミュージックという感じで 3 拍子系のノリで抑揚をつけつつ、軽快になめらかに展開していく、まさに Minimum Vital ワールドが全編に渡って展開する、個人的には久々にヘビロテの予感がする良作です。

ギターによるフュージョンちっくなサウンドがたまらない!!

フレンチプログレお気に入りアルバム10選

ふとツイッターで流れてきて知ったこのページ。

このサイトたまにマニアックなプログレセレクト記事書いていて面白い (以前イタリアンもやってましたね)。この記事、

大御所の「MAGMA」「Pulser」などが入っていないとツッコミを頂きそうだが、あくまで個人的な私の好みで紹介する

とあるにもかかわらず、はてブで速攻「マグマないからダメ」とかダメ出し食らってて、Magma 方面手厳しい😁

この手のセレクトは書いた人の好みがうかがい知れてなかなか楽しいですね。とは言え、こういうのを読んでしまうとやっぱり黙ってられないのがプログレマニア♪

というわけで選んでみました 10 枚。とは言っても私はリアルタイムで 70 年代聞いていたわけでもなく年代を気にして聞いてませんし、続編書くつもりもないので年代縛りはなしで、前述のページでは選ばれてないやつを選んでみました。

Minimum Vital / “Esprit d’amor”

バンドとしては中世(?)ラテン古楽を指向しているようですが、伸びやかなギターのプレイがフュージョン的な側面もあって、聴き始めた当初はフュージョンシンフォとして聞いていました。が、これはフレンチポップス+古典という感じでプログレ色もあまり感じません。このバンドの色々な側面が一番バランスされているアルバムではないかと思って気に入っており、かなり聞き込みました。これは 1997 年 4th。

よりシンフォフュージョン色がほしければ 1st, 2nd, 3rd あたりがオススメ。

Nemo / “Barbares”

現在のフレンチプログレを代表するバンドではないかと勝手に思っています。現代的なネオプログレという感じで、ある程度のキャッチーさ、ハードロック色、ネオプログレ色をバランスよく持っていて、それでいてスリリングな展開を見せ飽きさせない曲が多いのでかなり好きなバンドです。アルバムによっては(ここ数作)若干縦ノリな感じのハードな作品になってる感じが。これは 2009 年 8th。

Step Ahead / “Step Ahead”

フレンチプログレで10選でなくてもこれを挙げる人はほぼいないのでは? 1982 年の唯一作。フレンチらしい屈折した感じは全くないストレートで開放的な明るいポップなシンフォニック・ロック。ネオプログレと同じ路線を狙ってるんじゃないかと思える聞きやすいが、プログレらしいギミックにも富んだ好作品。

Asia Minor / “Crossing The Line”

このバンドだけは冒頭で紹介したページでも紹介されていたけど好きなので挙げられてなかった方の 2nd を。トルコ系フランス人によるバンド。かっちりしたクールな感じの演奏が特徴的だけど、フルートによる少し叙情的なメロディが印象的。1979 年作。

Halloween / Merlin

メタルバンドと間違えられそうですが、こちらは HAlloweenです。ミステリアスな暗黒なイメージの暗い強迫的なメロディが印象的です。ダークで幻想的な感じ。1994年3rd。

Jean Pascal Boffo / “Carillons”

ギターリストによる作品。1987年2nd。軽快でニューエイジ調で、ジャケットの絵とも一致する童話の世界のような明るいメルヘンチックな音楽。気持ち良い爽快感です。

Jean Luc Ponty / “Mystical Adventures”

これはフレンチなのか、プログレなのか微妙なところですが、曲の構成・展開は間違いなくプログレ。Ponty といえば “Enigmatic Ocean” なのでしょうが、プログレ的な曲としてはこの曲じゃないでしょうか。


Carpe Diem / “En Regardant Passer Le Temps”

今聞くとちょっとチープな感じもするのですが、ちょっと浮遊感のある異次元空間にいるような不思議な雰囲気の感じられる音です。ちょっとサイケな感じもありながら、ジャズ・ロック的なかっちり感もありますね。1975 年 1st。

Zao / “Osiris”

73 年、MAGMA を離脱したヨシコ・セファー、フランシス・カーンによって結成されたジャズ・ロックバンドの 1974 年 2nd。変拍子リフから一体となった疾走感ある音が迫ってくる感じ。妖しいスキャットも入り変な一体感のある妖しい世界へ引き込まれます。

One Shot / “Vendredi 13”

現(?)Magma メンバーによるバンド。とにかく重厚感ある攻撃的で疾走感あふれるジャズ・ロック。ひねりのない攻撃的な疾走感の中に屈折した変な演奏を入れながら突っ走っていく凶暴な暴走的ジャズ・ロック。1st の自主制作ライブ盤が衝撃的だったけど引用できなかったので2ndを(2001年作)。1st はあとにリミックス・リマスターで再発されている模様。


個人的には Gong 入れたかったけど、まああちらはカンタベリ枠とかフュージョン枠で。私が挙げるとフュージョン作品とか挙げそうでそれはそれで石飛んできそうなので。入れようかと名前挙げたけど落としたのは、

  • Jean-Paul Prat / “Masal”
  • Gong / “Gazeuse!”
  • Moving Gelatine Plates / The World Of Genius Hans
  • Priam / …3 distances / irregular signs …
  • Tiemko とか
  • Edhels とか
  • Magma、はみんな文句言ってるからいいよねw